『これからの「正義」の話をしよう』マイケル・サンデル著/鬼澤忍訳/ハヤカワ・ノンフィクション文庫/475P/900円
なんだか話題になっていた本、手持ちの本を読みきったらハードカバーで買うつもりでしたが、その前に文庫化されたので早速購入しました。
「正義」とは何か、日常生活でしっかり議論することは少ない。むしろ避ける話題のひとつだろう。しかし政治や道徳を語る上では避けられない概念だ。著者は古今東西の様々な哲学者の正義論を紹介しながら、最終的に自説を展開する。
何かのマンガに出てきたと言われる「正義の反対は悪なんかじゃない、また別の正義なんだ」というセリフ(※1)を具体的に説明している本だと感じた。正義は文化であり、科学的に正誤を結論づけられるものではない。しかし紹介された中には自分が予想もしなかった極端な正義論もあり、自分の考えがいかに狭かったかと恥じ入った。
著者が教鞭をとるハーバード大学はアメリカの大学であり、アメリカは世界最大の多元社会・多民族国家だ。アメリカ人全体が同一の正義を共有できないことは自明だろう。そういう社会においては常に、多種多様な正義を整理し折り合いをつける方法が模索されている。
日本の場合、ともすれば「単一民族」と思い込み、ひとつの正義が共有できると思い込んでしまう人もいる。「日本人なら当然〇〇すべきだ」といった言説を堂々と語る人は、戦時中だけでなく今でもたくさんみかける。
この本がどうして日本でベストセラーになったかはよくわからない(巧みな宣伝?)が、どういう社会を作るべきか落ち着いて考えてみるきっかけには良い本だと思う。
(※1)クレヨンしんちゃんの父のセリフと聞いていたが、調べてみるとどうも違うらしい。