2017年10月03日

電子書籍『ロウソクの科学』

rousokunokagaku.jpg
『ロウソクの科学』
ファラデー著/三石巌訳/角川文庫/科学・テクノロジー本フェア270円(通常期486円、紙の本の価格562円)

 1861年末のクリスマス休暇にロンドンの王立研究所で催された連続6回の講演の記録(解説より)。講演者のファラデーはあのファラデーで、この時から始まったクリスマス講演はその後毎年恒例となり、現在でも続いている。

 1861年といえば日本は江戸時代末期で、鎖国が終わってから明治が始まるまでの間にあたるが、イギリスはすでに議会制民主主義になっていた。アメリカでは南北戦争が起きていた。世界的に、科学技術が一般市民にとって身近になりつつある時代だったのだと思う。

 この講演ではロウソクの燃焼という現象を科学的に解説しているものだが、講演会場に多くの実験器具を持ち込み、聴衆の前で実演しながら話を進めている。今だったら安全面で問題になりそうな実験も含まれているが、きっと魅力的な講演だっただろう。

 当時の聴衆はどんな人達だったろうか。解説には「美しい衣服をまとった王侯貴族から一般市民の子弟まで、ロンドン中のあらゆる階層をひきよせた」とある。聴衆の反応については記録されていないが、帰宅して自分でもやってみることを推奨する言葉も多数あり、ワクワクしながら実際にやってみた人も多かったのではないだろうか。

 高貴な方々が聴衆に含まれていたためか、言葉遣いが「〜〜であります」調で丁寧すぎてまわりくどい印象もある。ジェントルな雰囲気は良いが、英語の原文にそんな表現があるのだろうか。翻訳の問題な気もする。ちなみに翻訳されたのは1962年で、訳者の三石巌氏の本業は物理学者だそうだ。同じ内容で別の訳者によるものが岩波書店から出版されているので、機会があったら比較してみたい。
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月03日

書籍『赤い帝国・中国が滅びる日』

chuugokugahorobiruhi.jpg
『赤い帝国・中国が滅びる日』
福島香織著/ベストセラーズ/256P/1512円

 久しぶりに紙の本を読んだ。なかなか刺激的なタイトルで、これを日本で買って中国に持ちこむのは少々度胸がいった。ただしこのタイトルは出版社か編集者の意向によるもので、著者は別に反中本のつもりで書いたわけではないようだ。タイトルが品位を下げているようで、もったいないと思う。

 内容は習近平政権の分析が中心であり、比較的最近の出来事を解説している。2016年11月に出版された本だが、その直前までの状況が扱われている。

 現在の中国トップである習近平の経歴、政治思想、方針についての論評が多くを占めるが、どちらかと言えば批判的な論調が中心。それは著者の情報源になった人々に偏りがあることが影響しており、もっと政権に近い立場の人々から取材すればまた違った論調になるかもしれない・・・と、あとがきで述べられている。

 2年近く前に、若い中国人社員から「習近平は人気あるんですよ。汚職と戦っているから」と教えられたことがある。日本人である私との会話だから本心だっただろう。反汚職は習近平が好むキャッチコピーのようだ。しかし本書によれば、中国の政治家で汚職と無縁な人物など皆無であり、叩けば誰でも埃が出る。つまり「汚職政治家を追放している」のではなく「追放したい政治家の汚職を暴いて追放している」に過ぎないということだ。どこまで事実かわからないが、そういう面があるということは否定できない。

 習近平が本書の分析通りの人物だとすれば、日本はかなり危ない状況にあると言えるだろう。中国の言論はますます潰れていくかもしれない。戦争は起きるかもしれない。経済は破綻するかもしれない。しかし確かなことは結局わからない。我々にできることは未来を正確に予測することではなく、何か起きた時に迅速に対応することだけなのだろう。

 確かなことは何もない。確かでないことだけは確かだ。それを当然の前提として理解しつつ、常に警戒と注視を怠らないことが大切だと思う。
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月02日

電子書籍『IoTとは何か』

IoTtowananika.jpg
『IoTとは何か 技術革新から社会革新へ』
坂村健著/角川新書/科学・テクノロジー本フェア432円(通常期778円、紙の本の価格864円)

 IoTは直訳すれば「モノのインターネット」だが、それは具体的にどういうものなのか。日本でその取組を先導してきた著者が解説している。著者はTRONプロジェクトやユビキタス・コンピューティングなどの構想においても中心的な役割を担ってきた方であり、現在はそれらを融合した新たなコンピュータのありかたを提唱している。

 ユビキタスが提唱された時に目指していたものは、スマホの登場と普及によって大きく実現に近づいている。というより、スマホが普及した理由はユビキタス的な活用そのものだったのだろう。iモードが登場した時にも感じたが、それが電話という形だったのは携帯コンピュータを人々に受け容れさせるためのカモフラージュに過ぎなかったのだと思う。

 本書はさらにIoTが普及していくための条件として、リスクコントロールの発想を転換することが必要だと説いている。ベストエフォートという言葉で説明しているが、むしろ自己責任の方がしっくりくる。システム全体について誰も責任を持たず、利用者が個々にルールを守って協調することで安全を確保する。これまで日本はそういう体制を受け容れてこなかったが、受け入れる必要があると考えている。

 必要であると同時に、日本ではなかなか受け容れられないだろうという点も含めて、まったくその通りだろうと思う。しかし徐々に変化の様子は認められるので、あと10年もすれば、つまり私が老人になる前には、そういう社会になっているだろう。

 その時、「昔はちゃんと誰かが責任を持って管理していたのに、今じゃみんな無責任に好き放題だ、なげかわしい」などと言わないように、早めに慣れておきたいものだ。
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月25日

電子書籍『日米開戦と情報戦』

nichibeikaisento.jpg
『日米開戦と情報戦』
森山優著/講談社現代新書/講談社最大50%ポイント還元セール864円(86pt還元、通常期864円、紙の本の価格950円)

 第2次大戦が始まるまでに日本、米国、それに英国なども含めて繰り広げられた外交的駆け引きの裏側を、戦後公開された各国の資料から再構築している。

 情報戦といえばなんとなく日本があまり得意ではない分野で、英米の情報機関には日本の暗号通信など筒抜けになっていたようなイメージがある。しかし本書や他の関連書籍を読むと、この両方とも正しくないことがわかってくる。つまり日本の情報機関もそれなりに相手国の暗号を解読していたし、英米もさほど完璧な活動をしていたわけではないということだ。

 しかし本書が強く示唆しているのは、暗号解読といった技術的な面よりも、得た情報をどのように解釈するかという部分の方がずっと重要であり、かつ、日米ともにその点では大きく失敗していたということだ。この点はとても勉強になった。

 特に、政策決定者が一次情報に触れることの危険性。一次情報とは現場担当者による報告書や日誌、本国から外交官への通信文などいわゆる「ナマの情報」で、さらに暗号解読によって得られた情報は「暗号化されているということはそれが重要で、事実であることの証明」と思いがちだが、そうでもないという。

 文書はなんらかの意図を持って書かれるものなので、事実を都合よく歪曲していたり、相手を説得するための誇張も含まれている。個人の日記でさえ、勘違いや願望が含まれてしまう。一次情報を読む時は複数の情報を突き合わせるなどしてそういう問題を回避する必要があるのだが、情報の専門家ではない政治家が一次情報に触れるとすんなり信じてしまいがちのようだ。

 政治家は常に自分なりの意見や推測を持っており、それに一致する情報は重視し、そうでないものは無視する。日本だけでなく米国もまた、そういうミスを犯す政策決定者が少なくなかったようだ。

 開戦に至るまでの日本政府の行動は実に残念なものだ。せっかく情報が得られても希望的観測に合うものにしか耳をかさない。上層部は誰も責任をもって決断せず、両論併記の曖昧な指示しか出さずに現場任せ。ただし本書では米国も実は似たようなものだったことがわかり、国によらず人間の本質なのかもしれない。

 しかし、こういう傾向は今の日本でもよくあるように思える。数百万の国民の死という巨大な犠牲を払っても、何も学べなかったのかと思うと、絶望的だ。
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月31日

電子書籍『SFを実現する』

SFwojitugensuru.jpg
『SFを実現する 3Dプリンタの想像力』20170608購入
田中浩也著/講談社現代新書/講談社最大50%ポイント還元セール756円(76pt還元、通常期756円、紙の本の価格907円)

 3Dプリンタが始めて登場した時のインパクトはやや冷めてきた感があるが、一般紙で騒がれなくなっただけで改良や実用化は着実に進んでいる。本書は3Dプリンタの魅力にはまってラボまで作った研究者が、それを使って何ができるか熱く語っている一冊。

 著者自身が中心になって進めている活動の紹介が多く、実に楽しそうであり、読んでて自分も3Dプリンタが欲しくなってきた。個人で購入するのはまだ普通ではないものの、会員になれば使えるような施設が増えつつあるようだ。

 現時点での3Dプリンタはまだまだ手軽ではなく課題も多いようだが、初期の携帯電話がアタッシェケース並みのサイズだったとか、初期のコンピュータが何トンもある巨大設備だったのと同様、黎明期の機械とはそんなものだ。今後どんどん新しい技術が加わったり有力な企業が参入することにより、そう遠くない将来には普及期に入るような気がする。
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月12日

電子書籍『ヒトはなぜ眠るのか』

hitowanazenemurunoka.jpg
『ヒトはなぜ眠るのか』
井上昌次郎著/講談社学術文庫/講談社最大50%ポイント還元セール756円(302pt還元、通常期756円、紙の本の価格821円)

 自己啓発書的な快眠本やグッズは世の中に数多く出回っているが、本書は東京医科歯科大学教授で睡眠学の専門家である著者が現在までの睡眠研究の成果を一般向けに解説したもの。そういう意味ではノウハウ本ではないのだが、割と使える情報が多かった。

 ただし専門家が書いただけあって一部あまりに学術的すぎる気もした。たとえば睡眠中の脳の活動状態について脳内物質やホルモンの分泌という面から説明している箇所では、長いカタカナの物質名が延々と列挙されたりしており、正直言って読むのが辛くなる。

 眠りについて書いた本を読むと眠くなるというジンクスがある・・・かどうかは知らないが、本書も若干眠くなった。
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月03日

電子書籍『ヒトラーとナチ・ドイツ』

hitora-tonatidoitu.jpg
『ヒトラーとナチ・ドイツ』
石田勇治著/講談社現代新書/講談社最大50%ポイント還元セール810円(81pt還元、通常期810円、紙の本の価格994円)

 ヒトラーと言えば独裁者、悪い政治家の代名詞であり、ナチと言えば悪い政治体制の代名詞となっている。その原因はホロコーストつまりユダヤ人等の大量虐殺であるが、そもそもホロコーストはどのように始まったのか、そしてユダヤ人でないドイツ人はどうしてナチを止められなかったかのか。そのあたりの経緯についてきちんと学びたいと思って本書を読んでみた。

 正直、読んでいて恐ろしくなった。ホロコーストも恐ろしいが、ヒトラーが独裁者になるまでの手口も同じくらい恐ろしい。国民の多くが無知蒙昧で教育も受けていないような国ならいざ知らず、20世紀のドイツという先進国でこんなことが起きるとは。知性や良心がいかに無力なものかと悲しくなる。

 しばしばナチは選挙で政権を取ったと言われる。確かに選挙でも勝ってはいるが圧倒的というわけでもなく、実際はかなり暴力や不公正な手段を駆使して政敵を潰して権力を獲得したものだ。正当な選挙で市民の支持を得たとは言い難い。それでも一度流れができてしまえば、抗うことはできなくなるのだろう。

 昔のことであり、彼らが使った手法が現代の日本や先進国で通用するとは思えない。しかし、時代が違うとは言っても100年も経っておらず、何かのきっかけで世相が逆戻りすることはあり得なくもないだろう。特にここ数年は日本でもアメリカでもヨーロッパでもポピュリストが強い支持を集めている政治状況があり、もしやという気がしないでもない。
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月02日

電子書籍『ウイルスは生きている』

uirusuwaikiteiru.jpg
『ウイルスは生きている』
中屋敷均著/講談社現代新書/講談社最大50%ポイント還元セール648円(65pt還元、通常期648円、紙の本の価格799円)

 ウイルスや遺伝子のふるまいから、生物とは何か、生命とは何かを深く考察する。本書を読んで、ウイルスというものへの認識が大きく変わった。

 従来の一般的な認識ではウイルスは遺伝子を持つけれど生物ではないという扱いだったが、近年の研究や新たなウイルスの発見などから、その定義を見直す動きが出ているという。タイトルから分かるように、著者はウイルスを生物に含めようと考える研究者だが、議論は決着していない。

 ウイルスが生物か否かという議論は、ウイルスに関する議論というより、生物とは何かという定義を検討するものだ。つまり生物の定義として「ウイルスが含まれる定義」と「ウイルスが含まれない定義」のどちらがより妥当かという議論にほかならない。つまりこれは、ウイルスという自然物の分析や研究ではなく、人間側の考え方の問題だ。生命の定義は人間自身のアイデンティティにも繋がることなので、白熱しやすいのだろう。

 それにしても、遺伝子をめぐるウイルスの働きの面白いこと。こんなミクロな世界にこれほど巧妙で複雑で、それでいていきあたりばったりなメカニズムが躍動しているとは、実にワクワクする話だと思う。
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月27日

電子書籍『人間と機械のあいだ』

ningentokikainoaida.jpg
『人間と機械のあいだ 心はどこにあるのか』
池上高志、石黒浩著/講談社/講談社最大50%ポイント還元セール1296円(518pt還元、通常期1296円、紙の本の価格1404円)

 東京大学の池上教授は人工生命の研究者で、大阪大学の石黒教授はロボットの研究者。池上教授は本書で初めて知ったが、石黒教授は人間そっくりのロボット(アンドロイド)を作っていることで有名だ。彼の作ったアンドロイドを用いた平田オリザの演劇プロジェクト「アンドロイド版 三人姉妹」を観劇したことがある。

 さて本書は彼と人工生命の研究者の活動と対話を通して、生物とは何か、心とは何か、人間が対象を人間あるいは生物と感じる条件は何か、といった問題を考察している。内部構造やルーツから考える生物学的なアプローチではない所が新鮮だが、やや哲学的な議論に入り込んでしまっており、後半はちょっと何を言ってるかわからないと感じた。

 ただ、本書で紹介されているアンドロイドは見てみたい。
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月25日

電子書籍『ビジョナリー・カンパニー』

bijonari-kampani-.jpg
『ビジョナリー・カンパニー』
ジム・コリンズ、ジェリー・ポラス著/山岡洋一訳/日経BP社/日経BPポイント50%還元セール1942円(971pt還元、紙の本の価格2097円)

 立派な会社や経営者を分析して役に立てようとするビジネス書は世の中に溢れており、本書もある意味そういう本のひとつだ。しかし特定の一社や一人だけを研究しているのではなく、全部で18の「ビジョナリー・カンパニー」を選定し、普遍的なポイントを探し出そうとしている。

 「ビジョナリー」を日本語にするなら先見性があるとかビジョンを持っているといった言葉になるだろうが、そう厳密に考えず「立派な会社」くらいの理解で良いだろう。ただし、単純に規模が大きいとか利益を上げているというだけの意味ではない。時流に乗って荒稼ぎするような会社ではなく、長年に渡って確固たる信念を貫いている企業が挙げられている。

 まず対象企業をどうやって選定し、どのような資料を集めて分析したかの説明だけでまるまる一章使って語られているが、忙しい人はとりあえず著者らを信用して、そこは飛ばしてもいいだろう。 1992年までの資料を分析して1995年に出版された本であり、しかもその時点で50年以上の歴史を持つことや経営者の世代交代を経験していることを条件にしているため、AppleやGoogleなどの新興企業は含まれていない。

 基本的には会社経営者に向けて書かれた本ではあるが、薦められているポイントは会社内の小さな部門に対しても適用可能なものばかりだ。自分としても試してみたいと思うことが多数あった。そう簡単に実行できるわけではないが、参考にしてみたいと思う。

 ところで本書を読みながら何度も、自分が今勤めている会社はどうだろうか、自分の上司達はどうしているだろうかと自問を繰り返した。どういう結論になったかここには書かないが、まあ、がんばろう。
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする