2017年06月25日

電子書籍『ビジョナリー・カンパニー』

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『ビジョナリー・カンパニー』
ジム・コリンズ、ジェリー・ポラス著/山岡洋一訳/日経BP社/日経BPポイント50%還元セール1942円(971pt還元、紙の本の価格2097円)

 立派な会社や経営者を分析して役に立てようとするビジネス書は世の中に溢れており、本書もある意味そういう本のひとつだ。しかし特定の一社や一人だけを研究しているのではなく、全部で18の「ビジョナリー・カンパニー」を選定し、普遍的なポイントを探し出そうとしている。

 「ビジョナリー」を日本語にするなら先見性があるとかビジョンを持っているといった言葉になるだろうが、そう厳密に考えず「立派な会社」くらいの理解で良いだろう。ただし、単純に規模が大きいとか利益を上げているというだけの意味ではない。時流に乗って荒稼ぎするような会社ではなく、長年に渡って確固たる信念を貫いている企業が挙げられている。

 まず対象企業をどうやって選定し、どのような資料を集めて分析したかの説明だけでまるまる一章使って語られているが、忙しい人はとりあえず著者らを信用して、そこは飛ばしてもいいだろう。 1992年までの資料を分析して1995年に出版された本であり、しかもその時点で50年以上の歴史を持つことや経営者の世代交代を経験していることを条件にしているため、AppleやGoogleなどの新興企業は含まれていない。

 基本的には会社経営者に向けて書かれた本ではあるが、薦められているポイントは会社内の小さな部門に対しても適用可能なものばかりだ。自分としても試してみたいと思うことが多数あった。そう簡単に実行できるわけではないが、参考にしてみたいと思う。

 ところで本書を読みながら何度も、自分が今勤めている会社はどうだろうか、自分の上司達はどうしているだろうかと自問を繰り返した。どういう結論になったかここには書かないが、まあ、がんばろう。
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2017年06月20日

電子書籍『人類進化の700万年』

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『人類進化の700万年 書き換えられる「ヒトの起源」』
三井誠著/講談社現代新書/講談社最大50%ポイント還元セール702円(70pt還元、通常期702円、紙の本の価格864円)

 本書を読んで最も良かったと言える点は、ネアンデルタール人とか北京原人とかアウストラロピテクスとか、私が子供の頃(昭和50年代とか1980年代)に覚えた知識はすでに多くが否定されており、更新する必要があることを思い知らされたことだ。

 例えばネアンデルタール人の学名は「ホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシス」だと覚えていたが、これはネアンデルタール人が現生人類の祖先と考えられていた時代の命名で、彼らが我々とは別の人類で絶滅種とされる現在では「ホモ・ネアンデルターレンシス」が正しい。しかしもちろん、これだって将来変わる可能性があるのだ。

 まさに本書を読んでいる最中にも、700万年以上前の人類と思われる化石がヨーロッパで見つかったというニュースに接した。これまでの調査結果から考えるとさすがにそれは無いんじゃないかと思うが、旧来の定説が覆されるかもしれない。人類学はまだまだ不安定で、これからの学問なのだと感じられる。

 また、本書の最終章で触れられているように、人類に関する研究は私たち自身のルーツに関するものであるが故に、どうしても「こうであってほしい」という願望や思い込みが分析に入り込み、客観性が損なわれがちだ。アフリカに対する偏見がつい20〜30年前まで学術界に残っていたというのも、残念ではあるが意外ではない。まだまだこの分野は変遷していくのだろう。

 ところで人類学者というのは、数本の歯や手足の骨の化石だけでひとつの種の存在を提唱し命名するものなのか。同じ理系でも、実験による検証ができる分野とそうでない分野では常識が全く違うようだ。
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2017年06月10日

電子書籍『世界でもっとも強力な9のアルゴリズム』

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『世界でもっとも強力な9のアルゴリズム』
ジョン・マコーミック著/長尾高弘訳/日経BP社/Kindle版2000円(紙の本の価格2160円)

 アルゴリズムという言葉は広い意味では何らかの仕事を実行するための手順全般を指し、狭い意味ではコンピュータプログラムが何かを実行するための概念を指す。タイトルで前者を期待していたが本書が述べているのは後者だった。あくまでもコンピュータ科学の本である。
第1章 イントロダクション──コンピュータが日常的に使っているすごいアイデアはどんなものか
第2章 検索エンジンのインデクシング──世界最大の藁山から針を探す
第3章 ページランク──グーグルを起ち上げたテクノロジー
第4章 公開鍵暗号法──葉書で機密情報を書き送る
第5章 誤り訂正符号──自分で誤りを訂正するシステム
第6章 パターン認識──経験から学ぶ
第7章 データ圧縮──無から有を生み出す
第8章 データベース──一貫性の追求
第9章 デジタル署名──このソフトウェアを本当に書いたのは誰か
第10章 決定不能性とはなにか
第11章 まとめ──指先の天才はもっと賢くなるか
 初学者向け(あるいは門外漢向け)を想定してか、かなり基本的なことから説明している。プログラムの話だがソースコードのようなものは用いることなく、現実世界に置き換えた例え話を多用する説明手法が取られており、理解はしやすい。

 すでにある程度知っていた話もあるが、パターン認識とデータベースについては知らなかった。本書の紙版は2012年に出版されているが、パターン認識については今後AIの発展で大きく進歩するだろうと思われる。ただし機械学習で得られた判断がはたして「アルゴリズム」と言えるのかは少々疑問だ。
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2017年05月30日

電子書籍『VRビジネスの衝撃』

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『VRビジネスの衝撃 「仮想世界」が巨大マネーを生む』
新清士/NHK出版新書/Kindle日替りセール299円(通常期713円、紙の本の価格799円)

 VRとはヴァーチャル・リアリティの略であり、基本的な概念は割と古くからあるが、現実的になってきたのは最近のことだ。本書に曰く、2016年がVR元年だという。個人的には興味がありながら触れる機会がなかったものの、著者の予想が正しければいずれ体験することになるだろう。
序章 VRビジネスの大潮流──熱狂はなぜ生まれたのか?
第一章 VRの現在──映画とゲームをつなぐものは何か?
第二章 ハイエンドVRの夜明け──オキュラスはなぜ生まれたのか?
第三章 日本のVRビジネス──独自のビジネスモデルは生まれるのか?
第四章 VRからAR・MRの時代へ──これから登場するビジネスとは?
 技術的な解説とビジネスとしての評価が入り混じっているため、どちらかに強く関心を持つ人にとっては掘り下げが足りないと感じるだろう。個人的には、技術的な部分がもっと読んでみたいと思った。ただし開発者達の伝記的な部分はそれなりに面白いので、入門書としてはちょうどいいのかもしれない。

 自分自身が仕事としてVRビジネスに関与する可能性は低いが、恐らくユーザーにはなるだろう。VRが本格的に普及するにはまだ何段階かのブレークスルーが必要だと思うが、関心を持って動向を見ていようと思う。
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2017年05月29日

Kindle Oasis購入

 ながらくPaperwhiteを愛用していましたが、勢いでOasisを購入しました。3Gと広告のないモデルで、37,980円という価格はPaperwhiteの倍以上ですが、それだけの価値はある‥‥かな‥‥?

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 左がOasis、右がPaperwhiteです。Oasisの方が一回り小さく見えますが、画面サイズは同じです。解像度も同じですから、文字サイズや行間を同じに設定すれば表示される文字数も同じになるはずですが、微妙にズレるようです。

 質量はPaperwhiteの217gに対してOasisは131g、電池を含むカバーを装着すると239gでした。つまりPaperwhiteを100とした場合、Oasis単体では60ですが、カバー込みだと110になります。

 ちなににiPhone6は129gなのでOasisと3g(約1.6%)しか変わりません。iPhoneよりサイズが大きい上に重心が持つ所に寄っているため、体感的には非常に軽く感じます。

 カバーに内蔵されたバッテリから本体へ充電される構造ですが、読む時はカバーを外した方がスッキリして良いです。バッテリの限界は試していませんが、本体だけでもそんなにすぐにはなくならないようです。カバー色はウォルナット(茶色)にしました。スウェード調なので乱暴に扱うと傷がつきますが、使い込んだ味が出てくる感じです。

 ただし、布団に仰向けに寝転がって読む時には持ちにくいことがわかりました。重さが手前側にかかる場合、この持ち手の形状では却って支えにくいからです。そこで当面、家で読む時はPaperwhite、外出時はOasisという使い分けをしようと思います。
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2017年05月23日

電子書籍『風俗で働いたら人生変わったwww』

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『風俗で働いたら人生変わったwww』
水嶋かおりん著/コア新書/コアマガジン/Kindle版540円(紙の本の価格850円)

 タイトルは多分、映画化もされたマンガ『風俗行ったら人生変わったwww』のパロディであろう。本書を知ったきっかけは、2015年3月に観劇したアマヤドリ「悪い冗談」のアフタートークゲストとして著者が招かれていたこと。トーク内容の大半は失念したが2020年五輪開催を前に東京の風俗店が排除されることへの危惧(これは芝居のテーマにもなっていた)を語っていた覚えがある。あと、「www」は「ウェイウェイウェイ」と読むらしい。
序章 不幸物語の終焉
第一章 風俗で働いたら人生変わった
第二章 だから風俗嬢は面白い
第三章 風俗嬢とは一体何者なのか
第四章 風俗を巡る誤解と偏見
第五章 誰が風俗嬢を殺すのか
第六章 これから風俗で働く人のために
 女性が風俗で働くことは「金のために行き着く最後の手段」というイメージがある。以前読んだ『最貧困女子』もそういう認識だった。多くのセックスワーカーがそういう背景を持っているのは事実だろう。著者が風俗で働くようになるまでの経緯もやはり不幸な環境によるのだが、しかし著者はこの仕事に対して誇りを持ち、肯定的に捉えている。

 風俗嬢や風俗業界を取り巻く環境は偏見や誤解が多く、差別的な扱いもされる。風俗嬢自身にも色々な問題があることは認めつつ、それを克服し、よりよい業界にしていこうとする姿勢は感心する。特に、風俗嬢として働く人々に様々なアドバイスをする第六章は他に例を見ない指南書ではないだろうか。

 読者として想定されているのは客となる人々と風俗嬢として働く女性達の両方で、特に後者に対して様々な知恵やアドバイスを伝える部分は責任感のある先輩の言葉として温かみを感じる。私自身はどちらにも該当しないのだが、しかし世の中には間違いなくそういう世界があることを真摯に受け止めたい。
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2017年05月17日

電子書籍『寺院消滅』

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『寺院消滅 失われる「地方」と「宗教」』
鵜飼秀徳著/日経BP社/日経BPポイント50%還元セール1600円(800pt還元、紙の本の価格1728円)

 日本国内の仏教寺院の数が急速に減少し、形だけ寺があっても住職がいない無住寺院もかなりの数に昇るという。信仰のあり方や葬儀のスタイルが変わったこと、地方の過疎化と都市への人口移動などに加え、国家との関わりなど歴史的な経緯も影響しているという。自身も僧侶の資格を持つ著者が、様々な事例を丁寧に取材してまとめている。

 都会で暮らしていると、日常生活で自分の信仰を意識することはほとんどなくなっている。家に仏壇や神棚もなく、墓参りでしか菩提寺に足を運ぶこともない。かつての寺は地域コミュニティの中核となっていたようだが、もはやその機能は失われている地域が大半だろうし、今後ますます減っていくだろう。

 この問題を仏教関係者の立場から見るのと一般市民から見るのでは大きく違う。前者にとっては当然死活問題だが、後者にとってはそれほどでもない。私自身は後者なので「時代の流れだからしょうがないね」という程度の姿勢でも良い。もちろん一般市民でも信仰心の篤い人はこの状況を残念に思っているだろうが、そもそも寺が運営できなくなる環境になっているのだから、どうしても必要なものという認識はされていなかったはずだ。

 ただ、それとは別にひとつ印象に残ったエピソードがあった。それは第三章に出てくるある僧侶の話。彼が昔タイのエイズ患者を収容するホスピスに行った時、現地の僧侶はべっとり体液でただれた患者の手を素手で握っていたのに、自分はそれができなかった、どうしても家族や寺のことが頭をよぎってしまったと。そしてそんな自分のことが悲しくて泣いてしまったという。
 そんな私に対して、タイの僧侶は、何事もなかったように「当然ですよ、あなたには守る家族がいて、守る寺があるのでしょう。でも、タイで出家したということは、支えてくれる人々に命を預けたということを意味するのです。だから私には妻も子供もいません。仮にエイズに感染して死んでも弟子が後を継いでくれます。何の問題もありません」と教えてくれました。
 (中略)
 私はその時、初めて分かりました。出家、つまり僧侶の独身主義には意味があったんだなと。
 私は出家したわけでもなく独身だが、いざとなれば自分の信じる行為のために躊躇なく命を賭けられるのだなと思うと、少し気が楽になった。
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2017年05月05日

電子書籍『夜は短し歩けよ乙女』

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『夜は短し歩けよ乙女』
森見登美彦作/角川書店/kindle半額セール292円(通常期560円、紙の本の価格605円)

 『四畳半神話大系』の森見登美彦の作品。これも同様に京都の大学生の話なので、雰囲気はよく似ている。青春ですよ恋愛ですよ悩める若人ですよ。黒髪の乙女を想う主人公のうじうじした所は自分にそっくりで感情移入しやすいものの、最終的に彼は───いや、ネタばれになるのでやめておこう。(小説を読むと文体が移りやすい)

 四畳半神話体系が平成20年の作品で本作は21年だから連作と言ってもいいかもしれない。しかし前作がややSFじみた展開だったのに対し、本作はもっとファンタジーな印象だ。奇遇にも今年アニメ化されたと聞いているが、確かに映像化に向いていると思う。機会があれば観てみたい。
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2017年04月29日

電子書籍『新幹線開発物語』

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『新幹線開発物語』
角本良平著/中公文庫/Kindle20%ポイント還元フェア778円(156pt還元、紙の本の価格972円)

 本書は、1964年に出版された『東海道新幹線』の一部を改定した上で新たな考察を追加したもので、2001年に出版された。電子書籍化は2014年。

 原書が出版されたのは東海道新幹線が開業する5ヵ月ほど前で、その計画から建設に携わった角本氏が「『鉄道斜陽化』の今日なぜわれわれがこの計画に踏み切ったか、どんな心構えでこの大事業を進めたか、さらに技術面では、なぜこの方法を採り、他の方法を選ばなかったかを明らかに」するために執筆したという。淡々とした記述であるが当時の熱意が伝わってくる。

 基本的な技術は知っていることも多かったが、本書の重要な点は一般論ではなく具体的だということだ。どの駅(あるいは区間)でどんな工事を行ったか、どの地域にどんな課題があり、それをどうやって克服したか。固有名詞が多数出てくるので、新幹線に乗り慣れている人は「ああ、あの場所はそうやって作ったのか」と実感できるだろう。

 追加された部分は最終章の「新幹線その後」で、スピードアップなど技術的な発展を称えると共に、政治的な理由で不要な路線が次々に作られようとしていることへの苦言が呈されている。リニア新幹線に対する著者の意見もやや否定的だ。

 なぜ著者が東海道以外の新幹線に対して否定的な意見を持つかは本書を読むとわかるが、東海道新幹線が大成功したのは特殊な事情があったためであり、どこにでも当てはまるものではないからだ。中でも大きいのは、東京と大阪という大都市が約500km離れて存在していることで鉄道高速輸送の需要があったことだ。

 500kmは自動車にとっては遠く、飛行機にとっては近い距離で、鉄道が有利になる。東京−大阪間に時速200km以上で走る鉄道があれば日帰りが可能になり、ビジネス需要が見込める。そして当時の鉄道技術はちょうどこのような高速鉄道が可能なレベルに達する時期だった。

 技術はともかく、需要は鉄道会社が作ろうとして作れるものではない。実際、山陽や東北を初め政治的に作られた他の新幹線は、営業的に苦戦している。東海道新幹線を補完する形になるリニア新幹線の場合は多少異なる事情を持つが、予測が外れたら大損害が発生するのだから、危惧するのもわからなくはない。

 東海道新幹線を建設するときも、反対する人は少なくなかったという。それを地道な努力で説得し開通にこぎつけたかという苦労話も本書に多数出てくる。きっとリニア新幹線でもそうなるだろう。私としては、リニア新幹線が開通してどうような本が出版されるのが楽しみだ。
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2017年04月01日

電子書籍『マイナス・ゼロ』

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『マイナス・ゼロ (広瀬正小説全集1)』
広瀬正作/集英社/kindle日替りセール299円(通常期756円、紙の本の価格832円)

1945年の東京。空襲のさなか、浜田少年は息絶えようとする隣人の「先生」から奇妙な頼まれごとをする。18年後の今日、ここに来てほしい、というのだ。そして約束の日、約束の場所で彼が目にした不思議な機械――それは「先生」が密かに開発したタイムマシンだった。時を超え「昭和」の東京を旅する浜田が見たものは? 失われた風景が鮮やかに甦る、早世の天才が遺したタイムトラベル小説の金字塔。
(アマゾンの作品紹介より)

 本書の紹介文には「タイムトラベル小説の金字塔」とあるが、正直そこまですごいとも思えなかった。タイムトラベルものは前後関係の複雑な伏線を回収するのが醍醐味だが、主人公以外の身に起きた出来事が終盤で一気に語られるため、ちょっと強引な印象を受けた。

 ただし、昭和前半の東京の様子が非常に詳しく描写されており、その点は読み応えがある。これは海外小説の翻訳では味わえない面白さだ。作者は大正13年生まれで本作品は昭和40年に書かれたので、作品中に描かれる時代はだいたい作者が実体験している範囲だが、平成の我々からすると全体にノスタルジックであり、それが心地よい。
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