2017年12月11日

電子書籍『長城の中国史』

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『長城の中国史 中華VS.遊牧 六千キロの攻防』
阪倉篤秀著/講談社選書メチエ/講談社最大50%ポイント還元セール1458円(583pt還元、通常期1458円、紙の本は入手不可)

 いわゆる万里の長城、ザ・グレート・ウォール。中国を代表する建築物としてこれ以上のものはないだろう。宇宙からも見えるなどというのは俗説らしいが、何千キロという長さを持つ超巨大建築であることは間違いない。残念ながらまだ実物を見に行ったことがないのだが、中国に住んでいるなら一度は見ておきたいものだ。

 しかし本書を読んで、長城がどういうものか全然知らなかったことを痛切に感じた。長城と聞いて私たちがイメージする煉瓦造りの壁が全長に渡って続いているわけではない。そもそも始皇帝時代やもっと前に作られた初期の長城は、現在のような連続した壁ではなく、敵の動きを見張る建物が点々と連なっていたものだったらしい。

 また、イメージ的にはピラミッドのような古代建築の区分だったが、現在のような形での長城ができたのは15世紀から16世紀にかけて明の時代という。日本で言えばちょうど戦国時代なので、古代建築というほどではないだろう。

 そして元や清など北方民族の王朝が中国を支配した時代には当然ながら無意味な存在となるので、ずっと使われていたわけではない。満州族の清が中国と統一した時点でその役目は終わり、現在は単なる観光地となっている。もちろんそれは戦争がなくなったからであって良いことなのだが。
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2017年12月03日

電子書籍『境界性パーソナリティ障害』

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『境界性パーソナリティ障害』
岡田尊司著/幻冬舎新書/Kindle日替りセール299円(通常期760円、紙の本の価格821円)

 心療内科という分野ができてからだろうか、発達障害とかメンヘラとかADHDとか、軽い精神疾患がずいぶん増えたように思う。本書で扱われる境界性パーソナリティ障害もその一つだ。

 現代においてこの病気が増えている理由について考察されているが、発症者が増えたのか認知件数が増えたのかはなんとも言えないだろう。昔なら「めんどくさい人」「落ち着きのない子」といった性格の問題として扱われていたことが、病気として治療の対象になっているのかもしれない。

 それはさておき現実に深刻な状態にある人がいるのは事実で、そういう人が身近にいた場合の対応について本書は解説している。ただ、この病気の原因の多くが家族との関係や幼少時の体験にあるとするなら、当面私の周囲には関係がなさそうだ。

 あとは職場や社会的な関係の中で接した人がそうだった場合だが、正直言ってうまく対応する自信はない。できるのは、余計な口出しをして悪化させないように距離を取ることぐらいだろう。医者でもカウンセラーでもないので、こういう本を何冊か読んだくらいで何かできる気になってはいけない。
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2017年11月19日

電子書籍『文化大革命』

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『文化大革命』
矢吹晋著/講談社現代新書/講談社最大50%ポイント還元セール648円(65pt還元、通常期649円、紙の本の価格799円)

 文化大革命の時期はおおよそ1967年から76年までの10年間とされる。本書はその内容と経緯についてまとめたものだが、文革終了の13年後に当たる1989年10月に出版されている。まだ多くの人にとって文革の記憶が生々しく残っていたであろう。

 文革は一言で言えば狂信的な共産主義者の暴走だが、反対者が悪と断じて糾弾される様子はディストピア小説のようで恐ろしい。毛沢東への個人崇拝があったからこそ実現したのだろうが、一歩間違えばポルポト派のカンボジアのような悲劇になっていたかもしれない。いや、犠牲者の数としては実際そのレベルだ。

 本書の文革の内容に関する記述は比較的あっさりしており、むしろそれを巡る政治家たちの権力闘争が中心になっている。毛沢東と江青ら四人組、林彪、劉少奇、周恩来が何をしてどうなったかがドラマチックに描かれている。中国人の権力闘争というのは日本人のそれとはレベルが違い、比喩抜きで殺すか殺されるかという戦いだが、それが文化というものなのだろうか。

 それから指導者は何代か変わり、国民の生活もだいぶ豊になってきているが、現在の指導者である習近平は毛沢東並みの権力集中を図っているとも噂される。文革と全く同じことは起きないとしても、何かのきっかけで似たような暴走が起こることはありえなくもないと思う。
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2017年11月17日

電子書籍『脳からみた心』

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『脳からみた心』
山鳥重著/角川ソフィア文庫/科学・テクノロジー本フェア319円(通常期631円、紙の本の価格802円)

 初版は1985年にNHK出版から刊行されたもので、2013年に角川ソフィア文庫から再刊とほぼ同時に電子書籍化されている。従ってもう30年以上前に書かれた本であり、少々古い表現も残ってはいるが、内容は古くなっていないと思われる。

 脳の働きについて書かれた本としてはオリバー・サックスの『妻を帽子と間違えた男』がとても印象深いが、本書もまた長く読み継がれる価値がある良書だと思う。

 第一章では言葉、第二章では知覚(主に視覚)、第三章では記憶、第四章では心について語っている。第四章では右脳と左脳についてやや詳しく扱っているが、全体として解剖学的な記述は極力避けたとのことで、イメージしやすい表現が多い。

 人間は外界を直接認識しているのではなく、五感から得られた情報を解釈して脳内に再構築した世界を観ている。この解釈の部分は無意識に行われているわけだが、想像よりはるかに複雑な処理のようだ。

 本書では「心」と「意識」を区別して、無意識の情報処理を心と呼んでいるようだが、言葉の選び方として少し違和感がある。しかしこれもまた、私の中の言葉のイメージであり、普遍的なものではないのだろう。
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2017年10月07日

電子書籍『中国文明の歴史』

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『中国文明の歴史』
岡田英弘著/講談社現代新書/講談社最大50%ポイント還元セール648円(65pt還元、通常期648円、紙の本の価格864円)

 秦の始皇帝による統一から日清戦争の敗戦までを中国の歴史とみなし、主に民族の覇権争いと栄枯盛衰を解説している。始皇帝以前はまだ中国と言えるまとまりがなかった「中国以前」、清の敗戦以後は国境の外のできごとで中国の運命が決められるようになった「中国以後」と分類されている。

 中国人は多民族国家だが、圧倒的多数を占めているのは漢族だと言われる。しかし長い歴史の中で彼らは常に主流だったわけではなく、南方のタイ系民族や北方のモンゴル系民族が支配的だった時期も長い。王朝の移り変わりにおいても漢族の王朝が必ずしも多いとは言えない。

 印象に残った話は、秦の始皇帝の時代の秦人は大部分の現代中国人の祖先ではないというものだ。彼らの子孫が完全に絶えたという意味ではないが、後から入ってきた異民族の子孫の方がずっと多くなっているという。大半の現代ギリシア人が古代ギリシア人の子孫ではないのと似たようなものかもしれない。

 そもそも漢族という枠組みは文化的なものであって生物学的な意味での集団ではないとも言われる。実際、北京人と広州人では体格がまるで違っており、とても同じ民族とは思えない。南方の人々はタイ系、北方の人々はモンゴル系の遺伝子が多いのかもしれない。ただ、逆に言えば異民族もしばしば漢化されているので、あくまで文化的には漢族=中国という見方もできるのだろう。

 ただし本書がもっとも示唆的なのはそう言ったことより、清の敗戦以降はもはやそれまでの中国の歴史とは切り離されたものとみなしている点だろう。最終章で日本の影響が語られているのは著者が日本人だからかもしれないが、欧米やソ連との関係も含め、現代の中国は世界の一部に過ぎないのは間違いない。
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2017年10月03日

電子書籍『ロウソクの科学』

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『ロウソクの科学』
ファラデー著/三石巌訳/角川文庫/科学・テクノロジー本フェア270円(通常期486円、紙の本の価格562円)

 1861年末のクリスマス休暇にロンドンの王立研究所で催された連続6回の講演の記録(解説より)。講演者のファラデーはあのファラデーで、この時から始まったクリスマス講演はその後毎年恒例となり、現在でも続いている。

 1861年といえば日本は江戸時代末期で、鎖国が終わってから明治が始まるまでの間にあたるが、イギリスはすでに議会制民主主義になっていた。アメリカでは南北戦争が起きていた。世界的に、科学技術が一般市民にとって身近になりつつある時代だったのだと思う。

 この講演ではロウソクの燃焼という現象を科学的に解説しているものだが、講演会場に多くの実験器具を持ち込み、聴衆の前で実演しながら話を進めている。今だったら安全面で問題になりそうな実験も含まれているが、きっと魅力的な講演だっただろう。

 当時の聴衆はどんな人達だったろうか。解説には「美しい衣服をまとった王侯貴族から一般市民の子弟まで、ロンドン中のあらゆる階層をひきよせた」とある。聴衆の反応については記録されていないが、帰宅して自分でもやってみることを推奨する言葉も多数あり、ワクワクしながら実際にやってみた人も多かったのではないだろうか。

 高貴な方々が聴衆に含まれていたためか、言葉遣いが「〜〜であります」調で丁寧すぎてまわりくどい印象もある。ジェントルな雰囲気は良いが、英語の原文にそんな表現があるのだろうか。翻訳の問題な気もする。ちなみに翻訳されたのは1962年で、訳者の三石巌氏の本業は物理学者だそうだ。同じ内容で別の訳者によるものが岩波書店から出版されているので、機会があったら比較してみたい。
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2017年09月03日

書籍『赤い帝国・中国が滅びる日』

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『赤い帝国・中国が滅びる日』
福島香織著/ベストセラーズ/256P/1512円

 久しぶりに紙の本を読んだ。なかなか刺激的なタイトルで、これを日本で買って中国に持ちこむのは少々度胸がいった。ただしこのタイトルは出版社か編集者の意向によるもので、著者は別に反中本のつもりで書いたわけではないようだ。タイトルが品位を下げているようで、もったいないと思う。

 内容は習近平政権の分析が中心であり、比較的最近の出来事を解説している。2016年11月に出版された本だが、その直前までの状況が扱われている。

 現在の中国トップである習近平の経歴、政治思想、方針についての論評が多くを占めるが、どちらかと言えば批判的な論調が中心。それは著者の情報源になった人々に偏りがあることが影響しており、もっと政権に近い立場の人々から取材すればまた違った論調になるかもしれない・・・と、あとがきで述べられている。

 2年近く前に、若い中国人社員から「習近平は人気あるんですよ。汚職と戦っているから」と教えられたことがある。日本人である私との会話だから本心だっただろう。反汚職は習近平が好むキャッチコピーのようだ。しかし本書によれば、中国の政治家で汚職と無縁な人物など皆無であり、叩けば誰でも埃が出る。つまり「汚職政治家を追放している」のではなく「追放したい政治家の汚職を暴いて追放している」に過ぎないということだ。どこまで事実かわからないが、そういう面があるということは否定できない。

 習近平が本書の分析通りの人物だとすれば、日本はかなり危ない状況にあると言えるだろう。中国の言論はますます潰れていくかもしれない。戦争は起きるかもしれない。経済は破綻するかもしれない。しかし確かなことは結局わからない。我々にできることは未来を正確に予測することではなく、何か起きた時に迅速に対応することだけなのだろう。

 確かなことは何もない。確かでないことだけは確かだ。それを当然の前提として理解しつつ、常に警戒と注視を怠らないことが大切だと思う。
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2017年09月02日

電子書籍『IoTとは何か』

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『IoTとは何か 技術革新から社会革新へ』
坂村健著/角川新書/科学・テクノロジー本フェア432円(通常期778円、紙の本の価格864円)

 IoTは直訳すれば「モノのインターネット」だが、それは具体的にどういうものなのか。日本でその取組を先導してきた著者が解説している。著者はTRONプロジェクトやユビキタス・コンピューティングなどの構想においても中心的な役割を担ってきた方であり、現在はそれらを融合した新たなコンピュータのありかたを提唱している。

 ユビキタスが提唱された時に目指していたものは、スマホの登場と普及によって大きく実現に近づいている。というより、スマホが普及した理由はユビキタス的な活用そのものだったのだろう。iモードが登場した時にも感じたが、それが電話という形だったのは携帯コンピュータを人々に受け容れさせるためのカモフラージュに過ぎなかったのだと思う。

 本書はさらにIoTが普及していくための条件として、リスクコントロールの発想を転換することが必要だと説いている。ベストエフォートという言葉で説明しているが、むしろ自己責任の方がしっくりくる。システム全体について誰も責任を持たず、利用者が個々にルールを守って協調することで安全を確保する。これまで日本はそういう体制を受け容れてこなかったが、受け入れる必要があると考えている。

 必要であると同時に、日本ではなかなか受け容れられないだろうという点も含めて、まったくその通りだろうと思う。しかし徐々に変化の様子は認められるので、あと10年もすれば、つまり私が老人になる前には、そういう社会になっているだろう。

 その時、「昔はちゃんと誰かが責任を持って管理していたのに、今じゃみんな無責任に好き放題だ、なげかわしい」などと言わないように、早めに慣れておきたいものだ。
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2017年08月25日

電子書籍『日米開戦と情報戦』

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『日米開戦と情報戦』
森山優著/講談社現代新書/講談社最大50%ポイント還元セール864円(86pt還元、通常期864円、紙の本の価格950円)

 第2次大戦が始まるまでに日本、米国、それに英国なども含めて繰り広げられた外交的駆け引きの裏側を、戦後公開された各国の資料から再構築している。

 情報戦といえばなんとなく日本があまり得意ではない分野で、英米の情報機関には日本の暗号通信など筒抜けになっていたようなイメージがある。しかし本書や他の関連書籍を読むと、この両方とも正しくないことがわかってくる。つまり日本の情報機関もそれなりに相手国の暗号を解読していたし、英米もさほど完璧な活動をしていたわけではないということだ。

 しかし本書が強く示唆しているのは、暗号解読といった技術的な面よりも、得た情報をどのように解釈するかという部分の方がずっと重要であり、かつ、日米ともにその点では大きく失敗していたということだ。この点はとても勉強になった。

 特に、政策決定者が一次情報に触れることの危険性。一次情報とは現場担当者による報告書や日誌、本国から外交官への通信文などいわゆる「ナマの情報」で、さらに暗号解読によって得られた情報は「暗号化されているということはそれが重要で、事実であることの証明」と思いがちだが、そうでもないという。

 文書はなんらかの意図を持って書かれるものなので、事実を都合よく歪曲していたり、相手を説得するための誇張も含まれている。個人の日記でさえ、勘違いや願望が含まれてしまう。一次情報を読む時は複数の情報を突き合わせるなどしてそういう問題を回避する必要があるのだが、情報の専門家ではない政治家が一次情報に触れるとすんなり信じてしまいがちのようだ。

 政治家は常に自分なりの意見や推測を持っており、それに一致する情報は重視し、そうでないものは無視する。日本だけでなく米国もまた、そういうミスを犯す政策決定者が少なくなかったようだ。

 開戦に至るまでの日本政府の行動は実に残念なものだ。せっかく情報が得られても希望的観測に合うものにしか耳をかさない。上層部は誰も責任をもって決断せず、両論併記の曖昧な指示しか出さずに現場任せ。ただし本書では米国も実は似たようなものだったことがわかり、国によらず人間の本質なのかもしれない。

 しかし、こういう傾向は今の日本でもよくあるように思える。数百万の国民の死という巨大な犠牲を払っても、何も学べなかったのかと思うと、絶望的だ。
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2017年07月31日

電子書籍『SFを実現する』

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『SFを実現する 3Dプリンタの想像力』20170608購入
田中浩也著/講談社現代新書/講談社最大50%ポイント還元セール756円(76pt還元、通常期756円、紙の本の価格907円)

 3Dプリンタが始めて登場した時のインパクトはやや冷めてきた感があるが、一般紙で騒がれなくなっただけで改良や実用化は着実に進んでいる。本書は3Dプリンタの魅力にはまってラボまで作った研究者が、それを使って何ができるか熱く語っている一冊。

 著者自身が中心になって進めている活動の紹介が多く、実に楽しそうであり、読んでて自分も3Dプリンタが欲しくなってきた。個人で購入するのはまだ普通ではないものの、会員になれば使えるような施設が増えつつあるようだ。

 現時点での3Dプリンタはまだまだ手軽ではなく課題も多いようだが、初期の携帯電話がアタッシェケース並みのサイズだったとか、初期のコンピュータが何トンもある巨大設備だったのと同様、黎明期の機械とはそんなものだ。今後どんどん新しい技術が加わったり有力な企業が参入することにより、そう遠くない将来には普及期に入るような気がする。
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