2023年01月24日

電子書籍『日本の公安警察』

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『日本の公安警察』
青木理著/講談社現代新書/講談社50%ポイント還元キャンペーン935円(468pt還元、紙の本の価格990円)

 一般の警察が法律に違反した者を取り締まるのに対し、公安警察は国家に反対する人々を取り締まる、戦前の特高警察をルーツに持つ組織だ。本書ではその成り立ちから現在の組織構成と規模、主な活動内容などを解説している。

 特高はGHQによって解体されたが、ほとんど間を置かずに公安と名を変えて復活した。法律を守ることより国家を守ることを優先し、そのためには多少の非合法活動も辞さない彼らは、旧共産圏の秘密警察に近い。日本の公安警察も活動内容は大半が秘密にされている。

 彼らが純粋に国家の安寧を願うのであれば良いだろう。だが現実はそう甘くない。秘密に守られた組織は確実に腐敗するし、平和によって存在意義が揺らげば組織防衛のために敵を作り出そうとする。古典的には共産党を危険団体と言い張ることによって予算を獲得しているし、市民団体や左派ジャーナリストも標的にされている。

 彼らのような存在が全く無意味だとは言わないが、必要以上に権力を持たせることは危険でもある。彼らが国民を監視するのと同程度には、彼ら自身が監視されるべきだろう。


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2022年11月26日

電子書籍『コンテナ物語』

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『コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった 増補改訂版』
マルク・レビンソン著/村井章子訳/日経BP社/新生活SALE 最大80%OFF Kindle本キャンペーン1540円(15pt還元、通常期2772円、紙の本の価格3080円)

 現代の国際物流はコンテナが支えていると言っても過言ではない。多種多様な貨物がどれも同じ寸法形状の直方体の鉄箱に収められて効率的に運ばれる。だがコンテナが登場する以前の港では、様々な荷物を主に人力で船に積み込んだり船から降ろしたりしていた。そのため、貨物輸送の時間と費用の大半が港での作業にかかっていたという。

 本書はそういう昔ながらの輸送方法からどうやってコンテナ輸送が主流になったのか、数多くの課題を誰がどうやってクリアして今の形になったのか、その歴史を語っている。

 規格の揃ったコンテナを使えば効率よく運べるというアイデアはかなり古くからあったようだが、人力作業からコンテナへの移行はそう簡単ではなかった。なぜなら、コンテナの利便性を活かすためには、船の形状や港の設備はもちろん、陸上を運ぶトラックや鉄道に至るまで、輸送の最初から最後までがコンテナ用に最適化されている必要があるからだ。人力作業を前提に作られた市場にいきなりコンテナを持ち込んでも役に立たない。

 アイデアを実現しようとした人々は、コンテナの登場によって職を奪われる港湾労働者の反対や妨害を受けたり、コンテナ用に船や港を改修するための多額の投資が回収できるかという問題に悩まされたり、各国の古い法律や政策を変えるべく難しい交渉を乗り越えたりしてきた。もちろん一人ではなく、多くの実業家や企業や自治体がそこに加わった。

 イノベーションというのは、それが完成した後で見ると当たり前の存在になっているものだ。しかし本書のドラマを読むと、「それが無かった時代」から「それがある時代」への移行は一筋縄では行かないということがよく分かる。コンテナの普及には約半世紀の時間がかかった。次は何がどれだけかかって変わるだろうか。
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2022年11月20日

オーディオブック『サラバ!』

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『サラバ!上』
西加奈子作/松坂桃李朗読/小学館/Amazon Audible聴き放題(Kindle版792円)

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『サラバ!中』
西加奈子作/松坂桃李朗読/小学館/Amazon Audible聴き放題(Kindle版770円)

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『サラバ!下』
西加奈子作/松坂桃李朗読/小学館/Amazon Audible聴き放題(Kindle版748円)

 第152回直木賞受賞作。ある男性が数奇な半生を語る自伝的小説。テヘランで生まれてカイロにも一時期住んでいたこととか日本でライターとして働いていたことなど、作者の西加奈子の経歴と重なる点もあるが、性別も違うし極端すぎるのであくまで創作だろう。

 かなり特殊な性格の母や姉を始め、新興宗教の開祖やら遊び人やら個性的な人物が多数登場し、主人公の人生と交錯していく。高校や大学ではモテモテだったが社会人になる辺りで挫折して引きこもりのようになってしまうなど、青春ものといった趣もあるが、全体を通じたテーマは見当たらない。

 これを読んでどういう感想を抱くものなのか分からない。途中でその雰囲気から、以前読んだ『さくら』に似てると気づいて確認したら同じ作者だった。ちょっと不気味な部分もあるが、好きな人は好きだろうと思う。
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2022年10月10日

電子書籍『戦争プロパガンダ10の法則』

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『戦争プロパガンダ10の法則』

 戦争中の国家は国際社会に対して自国の正義を主張し、マスコミは国民の戦意を高揚させるように宣伝する。これらはいずれもプロパガンダと呼ばれるが、著者はこれを10種類に分類している。法則というより、この程度の数にパターン化されているという意味だろう。

 どのようなパターンかは各章のタイトルで示されている。それぞれ具体的な事例が紹介されているが、古くは第一次世界大戦の頃から本書が書かれた2001年の直前にあった湾岸戦争まで、対象となる戦争は幅広い。

第1章「われわれは戦争をしたくはない」
第2章「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」
第3章「敵の指導者は悪魔のような人間だ」
第4章「われわれは領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う」
第5章「われわれも意図せざる犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる」
第6章「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」
第7章「われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大」
第8章「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」
第9章「われわれの大義は神聖なものである」
第10章「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」

 今まさに起きているロシアとウクライナの戦争においても、両国が積極的に発信している情報はこれらに当てはまるものがほとんどだ。同時にこれらを網羅しているようにも感じる。20年前に書かれた本書の指摘が今もまったく色褪せていないことがわかる。

 侵攻したロシア側の主張は自分勝手なプロパガンダとして国際社会から白眼視されているが、ウクライナ側の主張にもプロパガンダ的な要素が多いことは忘れるべきではないだろう。当事者の言葉は真摯に聞きながらも鵜呑みにはせず、戦争が終わってからきちんと検証されることが望ましい。
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2022年09月17日

電子書籍『超孤独死社会』

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『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』
菅野久美子著/毎日新聞出版/プライムデー 最大70%OFF Kindle本セール704円(7pt還元、通常期1500円、紙の本の価格1760円)

 孤独死に伴う特殊清掃や遺品整理の話はすでに何冊か読んだが、本書でも過酷で胸の痛い事例が紹介されている。明日は我が身というか、どんな準備と対策をとっておくべきか考えながら読んだ。後半ではいくつかの業者や自治体が取り組んでいるサービスが紹介されているので参考にしたい。

 紹介された事例はいずれもゴミ屋敷化していたものだが、きちんと整理整頓されて早期に発見されれば専門業者が呼ばれる必要もないので、そういう事例がどのくらいあるのか気になった。できればそうなりたい。

 本書では、亡くなった方だけでなく特殊清掃や遺品整理を仕事に選んだ人達も詳しく紹介されている。あまり積極的に選ぶ人はいなさそうな仕事なので、そこに至った彼らの人生もまた興味深い。これから需要は増える一方だと思うが、本書で紹介されたような良心的な業者が多くなってほしい。
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電子書籍『激動 日本左翼史』

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『激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960−1972』
池上彰、佐藤優著/講談社現代新書/最大50%還元冬のKindle本ポイントキャンペーン847円(254pt還元、紙の本の価格1012円)

 『真説 日本左翼史』の続編。前作では共産党と社会党を中心に政治家の関係や活動の流れを紹介していたが、本作では新左翼や学生運動を中心にいわゆる過激派の歴史を扱っている。

 共産党が武装闘争から距離を置いたことに不満を持った若者が新左翼と呼ばれる様々な団体を作ったものの、しょせんは「子供の政治」であり自衛隊どころか警察にも歯が立たない。行動が行き詰まるなかで思想や主張だけがどんどん過激になっていく。次第に攻撃の矛先は他のセクトへ向かって内ゲバとなり、さらには仲間内にも向かって山岳ベースでの殺人とあさま山荘事件を引き起こす。

 同じ年にはテルアビブで空港乱射事件もあり、この頃から世間の支持は完全に失われてしまう。これらの凄惨な事件の数々は、多くの日本人に政治活動への忌避感を強く植え付けた。それによって最も恩恵を受けたのは自民党を始めとする既存の権力者だろう。公安は単に彼らを逮捕するのではなく、あえて事件を起こさせて世間から浮かせたという話も出てくる。文字通り権力は一枚上手だったのだ。

 社会主義国がことごとく独裁国家になってしまったように、学生運動もことごとく過激化していった。その思想自体に独裁や過激化を推奨する要素はないように見えるのに、これだけ同じパターンが繰り返されるのはやはり何らかの因果関係があるのだろう。

 本書の終盤で指摘されているように、同じような主張を持つ人々の集まりではより極端な説を唱える者が偉いとみなされ、過激になる傾向がある。今風に言えばエコーチャンバーだろうか。左翼に限らず「同志」の集まりは常にその危険を持っており、自分たちがそうなっていないか常に自問する必要があると感じた。
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2022年08月30日

オーディオブック『マリアビートル』

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『マリアビートル』
伊坂幸太郎作/原島梢朗読/KADOKAWA/Amazon Audible聴き放題(Kindle版733円)

 前作『グラスホッパー』に続く殺し屋シリーズの2作目。東京から盛岡へ向かう東北新幹線の車中で大勢の殺し屋たちが密かに死闘を繰り広げる。前作の登場人物が何人か出てくるが物語としては独立している。荒唐無稽というかご都合主義的な展開も前作同様だが、様々な伏線が最後の方で一気に回収されていく。

 半分余り読んだところで本作がブラッド・ピット主演でハリウッド映画化されると聞いた。たくさんの銃が出てくるので日本の話としてはだいぶ無理があるが、アメリカのアクション映画には合っていると思う。
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2022年08月16日

電子書籍『2030 半導体の地政学』

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『2030 半導体の地政学 戦略物資を支配するのは誰か』
太田泰彦著/日本経済新聞出版/最大50%還元冬のKindle本ポイントキャンペーン1980円(990pt還元、紙の本の価格1980円)

 半導体を制するものが今後の世界を制する。最先端チップを作ることができる企業は限られており、サプライチェーンの各所に独占や寡占が存在する。その中にあって、各国はどのような動きを示しているか。米国、台湾、中国、欧州、そして日本の現状と今後の戦略について紹介している。2030年を近い将来として扱っている上、時事的な話題が多いので数年後には陳腐化してしまうだろうが、これまでの歴史と現状をおおまかに把握することができた。

 別の本で軽く読んだことがあるが、5ナノや3ナノといった最先端の半導体チップを作る技術は一般人の想像を絶するもので、機密が多い以上に難解すぎて、我々が詳細を理解するのは困難だ。しかし技術を持つ企業の深謀遠慮や地政学的リスクを制御しようとする政府の思惑が絡み合うドラマとして興味深かった。面白いと言っている場合ではないかもしれないが。

 日本については残念な面が多い。かつてはこの分野でトップの座を奪い合ったこともあるのに、いまやかなり存在感が薄くなっている。本書後半ではそれでも日本の技術が強い部分が残っていることを示しているものの、それを国家戦略として生かすような動きがどれだけあるか疑問だ。ただ、この分野の勢力分布はめまぐるしく変化するので、2030年にどうなっているかは本当に予想できない。期待と不安が入り交じる読後感だった。
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2022年08月09日

オーディオブック『ペンギン・ハイウェイ』

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『ペンギン・ハイウェイ』
森見登美彦作/安國愛菜朗読/KADOKAWA/Amazon Audible聴き放題(Kindle版614円)

 小学四年生の男の子の冒険譚。四畳半神話体系などで知られる森見登美彦が2010年に書いた作品で、第31回日本SF大賞を受賞しているが、どちらかというとファンタジーではなかろうか。

 少年が暮らす町の中に、ある日突然大量のペンギンが現れるという事件が起こり、彼はその謎を研究し始める。町外れの草原で不思議な物体を見つけたクラスメートやいじめっ子との抗争、歯医者のお姉さんとの交流を交え、謎はどんどん膨らんでいく。

 子供の成長譚とも思えるが、最初からやたら大人びた思考をする子なので、成長という感じではない。それでも、騒動が終わった後に未来に向けて決意を新たにする様子は頼もしく、少し大人になったようではあった。
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2022年08月07日

電子書籍『老いの哲学』

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『老いの哲学 なぜあの人は100歳になってもボケないのか』
白澤卓二著/主婦の友社/最大50%OFF Kindle本 社会・政治書キャンペーン300円(3pt還元、通常期859円、紙の本の価格2491円)

 日本抗加齢医学会の理事を務め、長年老人医療に携わってきた白澤医師による老人論。90歳以上になってなお元気だった長寿者の実例を紹介しつつ、健康で長生きするにはどうすべきかを説明している。ただ、中にはそれほどしっかりしたエビデンスに基づいているわけでもない著者の所感もあるので、おおまかなイメージとして捉えるべきだろう。

 長寿のために気をつけるべきこととして列挙されている内容は特に目新しいものではない。生活習慣病を予防するため控えめな食事と継続的な運動を心がけること。生涯打ち込める趣味や仕事を持って最後まで活動し続けること。様々な世代の人と交流し常に気持ちを若く保つことなどだ。

 私も50歳になったので病気予防については色々やりだしているが、退職後の趣味活動については今のところ心許ない。海外駐在になってから特に趣味が減ってしまったので、日本に戻ったら新しいことにチャレンジしようと思う。
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