2025年05月03日

電子書籍『腎臓のはなし』

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『腎臓のはなし 130グラムの臓器の大きな役割』
坂井建雄著/中公新書/Kindle版902円(81pt還元、紙の本の価格902円)

 腎臓は人の寿命を決める臓器として最近注目が上がっているらしいが、自分の父も晩年に透析する状況だったこともあり、改めて詳しく学ぼうと思って読んでみた。しかし本書は医学生向けの教科書を新書用に簡略化したような内容で、一般向けとしては少々難しすぎる気がする。

 構成としては一章から五章までは腎臓の役割と仕組みの解説で、学術的な話が延々と続く。六章は腎臓研究の歴史、そして七章は腎臓の病気と予防法について述べられている。一般人が最も興味あるのは七章だと思うが、肥満と喫煙と高血圧を避けろといった普通のことしか書かれていないので、腎臓病予防について詳しく知りたい人にはあまりおすすめしない。

 とはいえ、なんとなく「血液を濾過して尿を作るフィルターのような臓器」くらいの認識だった腎臓が、実際は極めて複雑で精巧な仕組みを持っていることが知れたのは面白かったし、壊れたら再生できない細胞が多いことも初耳だった。
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2025年04月02日

電子書籍『女の氏名誕生』

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『女の氏名誕生 ――人名へのこだわりはいかにして生まれたのか』
尾脇秀和著/ちくま新書/Kindle版1210円(12pt還元、紙の本の値段1320円)

 『氏名の誕生』の続編にあたる。前書はほぼ完全に男性の名前について述べられていたが、女性の名前はまた異なる仕組みがあった。前書同様に本書も半分は江戸時代の女性名について述べられ、明治時代に行われた変更については後半で扱われる。

 江戸時代の女性の名前はよく時代劇に出てくるような「お○○」という形式が圧倒的多数だった。これを「おの字名」と呼ぶが、「お」は接頭辞なのか名前の一部なのか、由来は何なのかといったことは諸説あるようだ。これが明治になると「○子」の形が増えるが、これは当時の流行らしい。

 本書で印象に残ったのは、まず江戸時代までは名前の字にこだわりが無かったという話だ。発音さえ同じならどの漢字で書かれても気にしなかったらしい。そもそも女性は自分で字の読み書きができない人が多かったので当然かもしれない。サブタイトルにあるこだわりは、識字率が向上したことで初めて生まれたものなのだ。

 次に夫婦同姓の発端だ。江戸時代は女性に苗字は付けないのが一般的だったので、全員に苗字をつけることになって初めて生まれた問題ということだ。

 江戸時代の場合、例えば山田太郎に娘が生まれて花子と名付けたら、「花子」または「山田太郎娘花子」と表記されることはあっても「山田花子」とは書かない。結婚して鈴木大介の嫁になったら「鈴木大介妻花子」であり、「鈴木花子」とは書かない(ただし夫が死んで妻が戸主になった場合はこういう書き方になる)。

 これが明治の法律によって女性も直接苗字を名乗ることになったわけだが、結婚した女性の苗字は最初はその人の祖先を示すもの(つまり結婚しても変わらない、夫婦別姓)だったのが、あとから家族の名前という夫婦同姓を採用したとのこと。現在まさに「選択的夫婦別姓の是非」が議論されているが、そもそも現在の仕組みはそんなに長い歴史を持つわけでもなければ深い議論の末に決められたものでもないのだ。

 個人的には、マイナンバーという制度ができたのだから、個人を識別する必要がある時はそれを使い、名前なんかは各自の好きにすればいいと思うのだが、適当に決めた制度でも100年経てば「こだわり」を持つ人が出てくるようだ。
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2025年02月13日

電子書籍『氏名の誕生』

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『氏名の誕生 ――江戸時代の名前はなぜ消えたのか』
尾脇秀和著/ちくま新書/Kindle月替りセール468円(5pt還元、通常期935円、紙の本の価格1034円)

 現在の日本人の名前は、苗字(氏、姓)+名(いわゆる下の名前)という2つの要素から成っている。苗字は英語のFamily Nameに相当し、同じ戸籍の家族は同じ苗字になる。名は産まれたときに親によって付けられ、原則として生涯変わらない。

 これは苗字をもたない皇族以外のすべての日本人に適用されている名前の仕組みだが、こうなったのは明治初期の法律によるもので、それ以前はまったく異なる名前の仕組みがあった。本書は基本的に江戸時代の名前の仕組みについて詳しく解説している。

 書籍タイトルから予想される「氏名という現在の仕組みが誕生した経緯」については本書の続編にあたる『女の氏名誕生』の方が詳しい。この2冊はタイトルが違うが事実上の上下巻なので両方読むのが良いだろう。

 江戸時代以前の名前の仕組みが現在と異なるのは主に3点挙げられる。1点目は構成要素が2つだけではなく、氏・姓・姓名・称号・官名・通称・苗字・名乗・実名など非常に多くあったことだ。現在では同じものを指す氏と姓と苗字も元来は別々に存在した。また、すべての人がすべての要素を持っていたわけではなく、公家と武家と庶民では違ったし、男と女でも違った。

 2点目は頻繁な改名だ。現在では結婚で苗字を合わせる以外で名前が変わることはほとんどないが、江戸時代までは結婚以外に様々な場面で名前が変わっていた。位階などは階級が変われば当然変わるし、嫁入りや奉公で他家に入ってそこに同じ名前の人が先にいれば区別するために改名するのが普通だったようだ。また、複数の仕事をする人は同時に複数の名前を持つこともあったという。

 3点目は、名前がその人の身分や階級を示す意味を持っていたことだ。庶民であれば功績ある者のみ「苗字帯刀を許される」というように、そもそも苗字があることがステイタスだったわけだが、明治時代から全員が苗字を義務付けられることでその意味はなくなった。

 明治維新による改革は、大政奉還により武家から公家へ権力が戻ることでもあった。そのため江戸時代までの武家と公家の名前の仕組みは公家の方法に合わせるような動きもあったようだが、現実にはうまくいかず、結局は完全に新しい仕組みが作り出された。それが現在の氏名である。

 氏名は旧来に比べて非常にシンプルな名前の仕組みであり、身分や階級を示すこともなくなった。それでも人は自分の名前に愛着を持つ。その意識はどこから来るのか興味深いところだが、本書でそこまでは触れられていない。
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2025年01月29日

電子書籍『物価とは何か』

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『物価とは何か』
渡辺努著/講談社選書メチエ/Kindle日替りセール499円(5pt還元、通常期2090円、紙の本の価格2145円)

 簡潔なタイトルだが、補足するなら「物価はどう決まるか、誰がどうやって決めているのか」を語っている。ここで言う物価とは個別の商品の価格ではなく、世の中のあらゆる商品の集合体のことを指しており、著者は個々の価格と全体の物価の関係を蚊と蚊柱の関係に例える。

 個々の価格は企業がコストや利益や売れ行きを勘案して決めているのに対し、その集合体である物価は貨幣価値とインフレ率に相関し、これらは失業率や貨幣供給などと相関している。その関係を理論化するのがマクロ経済学であり、これまでマクロ経済学の本は読んだことがなかったので、新鮮だった。お金の話は誰しも興味があるが、マクロ経済はミクロ経済の足し算ではないため、なかなか馴染みにくいものだ。

 あとがきに書かれているように本書はマクロ経済学の教科書ではなく、著者自身の主張も色濃く反映されている。元日銀職員で現在は東大経済学部の教授という肩書で相当な説得力を感じさせるが、庶民感覚からはやや理解しにくい部分もあった。著者が提唱する「物価水準の財政理論」は政府の徴税権が貨幣価値の裏付けだと述べるが、いまいち飲み込みづらかった。

 物価は貨幣価値の裏返しであり、貨幣価値が下がるのと物価が上がるのは表裏一体だ。つまり物価を安定させるにはインフレやデフレを制御する必要があるが、現在の日本銀行がインフレ率をコントロールする手段として現在用いられているのは「トーク」だという。政策金利の上下もあるが、日銀総裁の談話発表によって金融業界の専門家を動かすことがメインだという。そう説明されると定期的に公表される談話の意味が理解できた気がする。他にもなるほどと思う部分は多かった。

  これを読んだからと言って自分の経済活動が変わるものではないが、政府や日銀のやっていることが少し理解できた気がする。
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2025年01月04日

電子書籍『Science Fictions あなたが知らない科学の真実』

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『Science Fictions あなたが知らない科学の真実』
スチュアート・リッチー著/矢羽野薫訳/Kindle版1693円(17pt還元)

 理系の学術論文は原則として「目的」「実験方法」「実験結果」「考察」「結論」という構成で書かれる。このうち実験方法は、別の人が同じ実験をしても同じ結果が出ることを確認できるよう、再現に必要な情報をすべて記載することが望ましい。しかし近年、十分な情報がなく再現試験が実施できなかったり、実施しても同じ結果にならないことが頻発している。これは「再現性の危機」と呼ばれ、科学の信用が損なわれている。本書はその現状および原因と対策について述べている。

 再現できない論文の割合は分野によって異なり、心理学やヘルスケアに多いようだ。本書によれば、例えば心理学分野の大規模な調査では約半数の論文が再現できなかったという。これらの分野は一般人の関心が高く、話題になりやすいことも影響しているだろう。ネットでよく見かける「最新の研究で意外な事実が明らかに!」というやつだ。しかし他の分野でも同様な問題は認められている。

 その原因は不正行為と詐欺師の横行だと著者は言う。具体的な手法として、実験結果の有意性を示すp値や学術誌の権威を示すインパクトファクターを不適切な方法でコントロールしたり、ポジティブな結果は論文発表するがそうでない場合は隠してしまう出版バイアス、些細な結果を誇大に見せかける表現方法などが挙げられている。

 そして、研究者がそういう行為に走る背景として、現代の研究者は就職先と研究資金を獲得するために自分の業績を大きく見せる必要に迫られ続けていることが指摘される。科学研究が貴族の趣味だった時代と異なり、今の研究者は詐欺師になる動機があるのだ。それは研究者個人だけでなく大学や研究機関も同様であり、組織の自浄作用も期待できない。

 このような状況は明らかに科学の危機である。また、現代の研究の大半は多かれ少なかれ税金を投入されていることからも、不正の横行は許されない。それを改善するためには研究者にモラル向上を呼びかけるだけでは不十分であり、制度の改善が必要だ。著者は研究の事前登録制やチーム制やオープン化といった改善提案を示し、分野によってある程度は実施されつつあるという。

 最後に、現代科学のひどい実態を世間に知らしめることは陰謀論や懐疑論に利用されるリスクがあるため、このような本を出版することには反対する人もいたらしい。しかし著者が言うように、それでも隠さないことが科学の科学たる所以であり、科学にこそ自浄作用があることを示すべきだろう。新しい時代の研究のあり方が早急に確立されることを期待したい。
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2024年12月07日

電子書籍『資本主義だけが残った』

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『資本主義だけが残った』
ブランコ・ミラノヴィッチ著/西川美樹訳/みすず書房/Kindle版3800円(38pt還元、紙の本の価格3960円)

 タイトルから「資本主義が他の経済システムに勝利した経緯の解説」を想像したが、そうではなかった。むしろ現存する資本主義がひとつではないことや、それらが抱える欠点を指摘するものであり、資本主義が安泰ではないことを指摘する内容だ。

 現存する資本主義のひとつは著者が「リベラル能力資本主義」と呼ぶもので、アメリカを中心とする西側先進国に見られるものだ。これは経済を発展させる仕組みとしてはとりあえず大きな問題なく機能しているが、金持ちの子はより金持ちになり貧乏人の子は上昇できない仕組みが格差を増大させている。

 もうひとつの代表的な資本主義は中国などの権威主義で見られる「政治的資本主義」だ。これは私が中国にいた時に感じていた漠然とした疑問に明確な答を示してくれたと思う。中国は公式には社会主義国を標榜しているが実態は完全に資本主義だ。しかし彼の国の資本主義は日本やアメリカとは明らかに異なり、為政者が恣意的にコントロールできることを重視するため、法律や制度は名目に過ぎず、実際は役人や政治家が判断する人治主義なのだ。

 後半ではグローバル化の功罪について考察している。ひとつの国の中だけで完結している場合と異なり、途上国から先進国へカネもモノもヒトも容易に移動できる現代になり、その影響がシステムに影響している。そこで現れるのが、先進国に産まれた人々と途上国に産まれた人々の間の不公平だ。移民問題だけでなく、海外への資本流出といった面でも歪をもたらしている。

 本書は総じて資本主義の現状をよく説明していると思うが、日本語訳があまりこなれていないと感じられた。いわゆる英文和訳的な言い回しが多く、何度か読み直さないと頭に入ってこない場合があった。その点を我慢すれば良書であると思う。
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2024年09月10日

電子書籍『オスとは何で、メスとは何か?』

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『オスとは何で、メスとは何か? 「性スペクトラム」という最前線』
諸橋憲一郎著/NHK出版新書/Kindle版940円(9pt還元)

 パリオリンピックで女子ボクシングに出場した選手の性別が疑問視されて話題になった頃にちょうど見つけて読んでみた本だが、イメージとはだいぶ違う内容だった。LGBTとも違う話で、そもそも私たちの性別は思っているほど単純ではないということが解説されている。

 従来、動物の性別はオスかメスのどちらかで、それ以外の状態はあくまでもイレギュラーなものだと思われてきた。しかし本書によれば性別は二極で語れるものではなく、オス100%からメス100%までの間にグラデーションがあり、しかも固定されたものではなく変化するという。このような性別のあり方を性スペクトラムと呼ぶ。

 個体の性別は基本的に遺伝子によって決まるが、魚類や昆虫では環境によって性が変わる場合がある。また人間でも赤ん坊の時は外性器以外あまり変わらず、更年期以降もまた差が少なくなっていく。性別は生殖に繋がる要素である以上、効率のいい生殖に向けて柔軟に形作られるのは理に適っているだろう。

 とは言え人類の場合、社会生活やスポーツにおける区別など生殖と直接関係しない場面でも男女の識別が必要になることも多く、そういう時に性スペクトラムの概念を当てはめるのは難しい。逆に言えば、私達の社会における性別の認識は生物学的な意味での性別とは乖離した形で定着してしまっているのかもしれない。

 であるなら、オリンピックでの騒動のような場面で「科学的に正しい解決法」は存在しないということになる。だからといって男女別をやめるということにもならないだろうから、当分は騒動が続くのだろう。
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2024年08月11日

電子書籍『教養(インテリ)悪口本』

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『教養(インテリ)悪口本』
堀元見著/光文社/日替りセール499円(5pt還元、通常期1430円、紙の本の価格1650円)

 科学的な現象や歴史的なエピソードなどの教養を用いて悪口を言うという、著しく嫌味な発想を追求したネタ本。あまり真面目に読むような本ではないが、紹介されている教養には初耳のものが多く、まだまだ自分の教養は足りなかったと思わされる。これ自体が嫌味か。

 書籍にできるほどの数を集めるのも大変だったろうと思う。何かの役に立つかと言えばまったく役に立たないが、時間を無駄にしたというほど無駄な本でもなかったと思う。
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2024年08月03日

電子書籍『実力も運のうち 能力主義は正義か?』

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『実力も運のうち 能力主義は正義か?』
マイケル・サンデル著/鬼澤忍訳/早川書房/Kindle版2178円(22pt還元、紙の本の価格2420円)

 2020年に米国で出版された本書は、2016年の米国大統領選でトランプが当選した背景や、近年顕在化している著しい所得格差の道義的評価を中心に、能力主義(meritocracy、功績主義とも)の弊害を考察している。

 出自に関わらず能力によって評価される能力主義の社会は、貴族制や人種差別のある社会に比べて公平で公正で「良い」と考えられがちである。しかしそれによって人々が幸福になるとは限らない。なぜなら、そのような社会で低収入の仕事に就く人々は不運ではなく無能で努力不足の烙印を押されることになり、単に金銭的に貧しいだけでなく尊厳を傷つけられることになるからだ。トランプ当選は能力主義を称揚するエリートへの反発や不信感が原因だと考えるのは恐らく妥当だ。

 そもそ能力(あるいは功績)には努力だけでなく生まれつきの才能が大きく影響しており、それは本人の功績でも責任でもない。それは果たして称賛の対象になるのか。また、高学歴であることが成功の条件となっている実情と、学歴が(本人の努力の結果であると信じられていながら)実際は親の財力と学歴の影響が大きいことなどが指摘されている。その結果「アメリカンドリーム」はいまや失われ、生まれた家庭の階層から抜けられる若者はヨーロッパや日本より少ないという。

 著者は、あるべき社会に必要な共同体意識を取り戻すためには現在の能力主義の弊害を取り除く必要があると主張している。しかし現実的な代替案があるわけでもない。確かにそうだろう。現在の制度を作った人たちとて、社会を悪くしようとしたわけではない。

 基本的に米国の話であるが、同じことは日本でも起きている。日本では「自己責任」という言い方が広まっている。低収入な職業の人々を「底辺」などと呼んで蔑視し、高収入であることと立派な人間であることを同一視する風潮だ。その結果日本でも共同体意識は失われていると感じられるが、やはり米国と同様、保守政党だけでなく左派政党も能力主義に意義を唱えてはいない。

 社会が方向転換することは当分期待できないが、少なくとも自分は本書で指摘されている視点を失わないようにしたい。
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2024年07月03日

電子書籍『多様性の科学』

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『多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織』
マシュー・サイド著/ディスカヴァー・トゥエンティワン/50%ポイント還元キャンペーン2200円(1100pt還元、紙の本の価格2200円)

 チームで何かをする上でのメンバーの選び方やコミュニケーションの取り方がどれだけ重要かを説いており、全体としては組織論に関するビジネス書のようだ。ただ個別に紹介された事例やエピソードは物語としても面白かった。

 各メンバーが非常に優秀だったにも関わらず、白人プロテスタント男性ばかりで構成されていたCIAがオサマ・ビンラディンの影響力を見抜けたかったとか、リーダーに意見することができない登山チームが悲劇的な遭難に至った話などは、組織論的に納得しやすい。これとは少し違う視点として、「個人差」を多様性の一種として捉え、全員の平均値だけ見て標準化することの危険性を説く話は、目から鱗でもあった。

 後半では人類が現在のような繁栄に至った理由、他の類人猿と比較して何が優れていたかについても言及されており、いくつかの新しい知見も得られた。結論としては、それは他者からアイデアや知識を学ぶ力であり、個体だけでは達成できないことを集団が教えあい、世代を超えて発展させられたことだ。

 ただ、中には本当に定説となっているか疑わしい記述もあり、あまり鵜呑みにしない方がよいとも感じられた。ひとつの説として頭に入れておくくらいが良さそうだ。
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