
『火山入門 日本誕生から破局噴火まで』
島村英紀著/NHK出版新書/Kindle日替りセール299円(通常期712円、紙の本の価格799円)
タイトル通りの入門書。火山について一般的な知識は持っているつもりだったが、その認識が間違っていることを痛感させられた。
例えば昔習った「活火山・休火山・死火山」という分類も現在は廃止されているという(知らなかった)。これは死火山だと考えられていた御嶽山が1979年に突然噴火したことから改められたそうだが、逆に噴火しそうな前兆を示しながら結局噴火しなかった例もある。そもそも前兆と言いながら具体的に何がどうなったら噴火するのかもわかっておらず、まだまだデータ収集を重ねている段階なのだという。
本書で著者が何度も指摘しているのは、現在の火山学がまだとても低いレベルにあり、特殊な例を除いて「噴火予知」は不可能だという点だ。
もちろん、火山学者が無能なわけではない。地中深くの状態を把握するのは技術的なハードルが高いし、噴火を観測するのは命の危険を伴う。短くても何十年、長ければ何万年というサイクルで起こる現象で、実験室で再現することもできない。これらの悪条件を考えれば、よくやっていると思う。
しかし著者は、主に行政の火山対策についてはかなり批判的のようだ。観測体制はまだ不十分だし、近年導入された「噴火警戒レベル」も客観的・学問的な基準がなく経験と勘に頼っているという。2014年の御嶽山噴火の後でその最低レベル1の表現を「平常」から「活火山であることに注意」に変更したのは役人の責任逃れのためではないかと指摘する。予知できないものなのに、あたかも予知できるような名前の組織があることも問題だという。この辺りは、人の命に関わる分野の研究者として真摯な姿勢を感じた。
さて、大地震の後はほぼ例外なく近隣の火山が噴火しているという。東日本大震災から四年あまりで御嶽山が噴火し、箱根も不穏な様子だ。もし富士山が噴火すれば想像を絶する被害が生じるだろう。しかし、人間にそれを防ぐことはできない。世界有数の火山国である日本に暮らすなら、ある程度の覚悟は常に持っている必要があるのだろう。