2005年09月09日

RoHS指令について

 最近の製造業界では、WEEE指令とRoHS指令が話題になっています。正式名称は「電気・電子機器廃棄物(Waste Electrical and Electronic Equipment)指令」および「電気・電子機器における特定有害物質の使用制限 (Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment)指令」です。

 その内容を簡単に言えば、WEEEは「環境や人体に有害とされる6物質を使用している電気・電子機器の廃棄物処理に関する指示」で、RoHSは「今後製造される機器にそれらの物質を使用することの禁止」です。ちなみにWEEEは「ウィー」、RoHSは「ローズ」と発音するのが主流のようです。

 規制される物質は、鉛・カドミウム・水銀・六価クロム・ポリ臭化ビフェニール(PBB)・ポリ臭化ジフェニールエーテル(PBDE)の6つで、最後の2つを除く4物質については自動車関連の指令(ELV指令)と同一です。各物質の有害性については、詳しくまとめたサイトがたくさんあるので探してみて下さい。

 これらの「指令」とはEU指令で、欧州議会がEU加盟国に対し国内法の整備を要求するものですが、EU域内で流通する製品であれば規制対象になるので、輸出品を製造している多くの日本企業も影響を受けます。さらに、自社製品を直接EU域内に輸出していなくても、自社製品が組み込まれた製品が輸出されていればさかのぼって保証が求められます。私が勤めている企業は素材メーカーなので、多くの客先から製品のRoHS適合について問い合わせや証明要求が寄せられています。

 RoHS指令の原文(英語)を下記のリンクに置きました(たしか経済産業省のサイトにあったものだと思いますが、どこからダウンロードしたか忘れました)。
【RoHS指令(PDF形式116KB)】

 英語など読めんという方は、JETRO(日本貿易振興機構)が発行しているユーロトレンド2003年5月号に、邦訳および解説が掲載されています。PDF化されたものが以下のページからダウンロードできます。
【ユーロトレンド2003年5月号】
 少し前に探した時は記事ごとのファイルになっていたのですが、今見直したら月単位でまとめたファイルになっていて、2.5MBもありました。下記のリンクに以前ダウンロードしたファイルを置いておきます。こちらはWEEEとRoHSに関する記事の部分だけです(無許可なので見つかって怒られたら消します)。
【ユーロトレンド2003年5月号Report05(PDF形式94KB)】

 さて私がここで言いたいのは、「RoHSはお粗末な法律だ」ということです。

 環境問題はいまや錦の御旗であり、環境に悪い物質を規制すると言えば誰も反対できません。しかしRoHSの中身をよく読むと、あまりにも大雑把で具体性のない内容です。こんな法律に振り回される企業はたまったものではないと言いたい。

 RoHS指令の要は第4条の一文です(強調は筆者による)。
Member States shall ensure that, from 1 July 2006, new electrical and electronic equipment put on the market does not contain lead, mercury, cadmium, hexavalent chromium, polybrominated biphenyls (PBB) or polybrominated diphenyl ethers (PBDE).
「加盟国は、2006年7月1日から、新しく上市される電気・電子機器が鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB或いはPBDEを含んでいないことを保証する。」

 指令のタイトルでは use(使用)という単語ですが、条文では contain(含有)になっています。つまり、意図的にこれらの物質を使うだけでなく、不純物として混入することも許されないことになります。通常このような規制では上限値が指定されるのですが、この指令には上限値が書かれていません。第5条の1項に「電気・電子機器の一部の材料や構成部品に含まれている物質で、第4条1項に言及されるものに関し、最大濃度を必要に応じて設定する」とあるだけです。付属書には例外として使用が認められる機器と用途が列記されていますが、これらに含まれない製品の一般的な基準値はいくつなのか判りません。

 もし、完全にゼロでなくてはならないと言うなら、それは製造も保証も不可能です。自然界に存在する物質を原子1個たりとも混入させない手段はありませんし、完全なゼロを保証するには無限の精度を持つ分析機器が必要になります。ゼロを要求するのは科学を知らない役人の言うことです。そのため、少なくとも日本の法律で物質が制限されるときは必ず基準値が明記されます。こういう点で日本の法律は非常に厳密で具体的です。

 来年7月以降に販売する製品が対象なので、調達・製造・流通のタイムラグを考えればとっくに具体的基準が明示されていなくてはなりませんが、残り1年を切った今でも不明確です。その後「カドミウムは0.01wt%、他は0.1wt%とする案が検討されている」との情報がありますが、公式に決定したとの話はいまだ確認できません。ただ現時点ではそれしか拠り所が無いので、各企業ともこの値で見切り発車しているようです。

 曖昧なのは基準値だけではありません。"put on market"とは具体的に何をどうすることなのか、誰が誰に対してどのように証明するのか、そういう具体的な運用方法が欠けています。明記されていないというより議論が終わっていないようで、決定する前にスタートすることになりそうです。

 まさかEUほどの組織がそんなデタラメなことをするはずがないと思っていましたが、それは買いかぶりだったようです。JMC(日本機械輸出組合)という団体が発行しているJMCジャーナルには、そんな疑問を解消してくれる解説がありましたので、最後に紹介しておきたいと思います。

 3月の記事の「緻密さ」というタイトルには皮肉がこもっていて、読むとかなり笑えます。日本の役所では考えられないような事態が起きているようです。RoHS指令は日本人の考える“法規制”とは全然違う種類のものとみなす必要があるでしょう。6月の記事で著者は「一番重要だと思うのは、この問題を単なる規制へのコンプライアンスと捉えずに、リスクマネジメントの問題として考えていくという課題全体の受け止め方です」と書いており、もっともだと思いました。
【JMCジャーナル2005年3月号 EU環境法制の緻密さ(65k)】【ミラー】
【JMCジャーナル2005年6月号 “欧州と日本との「規制カルチャー」ギャップ、その対応”(234k)】【ミラー】

《9/13追記》
 以下のページも参考になるので紹介しておきます。
市民のための環境学ガイド/無毒化社会をどう見る
posted by #10 at 23:00| Comment(3) | TrackBack(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
トラックバック、ありがとうございます。
WEEEもRoHSも欧州の価値パラダイム、つまりノンリスクが主眼にあるように感じます。
私としては、社会がcontain(含有)を基軸に据えて社会が動き出すと、EPR(エネルギープロフィットレシオ)が悪くなるというトレードオフに注視したいと思っています。
安井至氏の無毒化社会への警鐘は基本的に賛成です。
Posted by よしどみ at 2005年09月16日 01:49
はじめまして、RoHS(ローズ)規格についてお教えいただきたいのですが。
今、シンガポール、香港、韓国、オーストラリア、アメリカで、製品を販売しようとしてます。
この国々は、RoHS(ローズ)規格に適合していなくても、輸出はできるのでしょうか?
(アメリカは無視しているとのことですが)
是非、お教えください。
ワインセラーが商品です。
Posted by 来海 徹 at 2006年10月04日 14:37
>来海さん
 私は専門家ではないので一般論しか答えられませんが、RoHSはあくまでもEUの規則ですのでEU域外への輸出に直接影響することはないはずです。部品として何かに組み込まれるような製品なら間接的にEU域内へ輸出される可能性もありますから注意が必要ですが、ワインセラーなら大丈夫ではないでしょうか。
 しかし、RoHSと同様な規制は世界的な潮流になっており、日本でも「資源有効利用促進法」が日本版RoHSと呼ばれています(RoHSのように完全禁止ではありませんが)。そのため御社の輸出先でも似たような法律が存在する可能性は否定できませんので、国ごとの法令調査が必要だと思われます。
Posted by #10 at 2006年10月04日 21:17
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RoHS(ローズ)規格
Excerpt: RoHS(ローズ)規格とは、ユーロッパ連合指令で電気・電子機器における特定物質の使用制限指令の事です。この規定は2006年7月1日までに電気・電子機器に6種類の危険物質を含有しないように求める規制です..
Weblog: 日々好日
Tracked: 2005-09-11 06:31

RoHS指令ってなんだ?
Excerpt: HDDの値段を調べてたら、RoHS指令準拠って書いてる奴がある。 アクセスタイミングとかがシビアだからなんか、基準でも出来たのかなぁ。 と思って、ぐぐって見た。
Weblog: 影ログ
Tracked: 2005-09-24 01:03